2020年03月31日

レオンポケットの行方

レオンポケット.jpg

 この夏、ソニーが満を持して打ち出そうとしていた「レオンポケット」が行場をなくしている。
 レオンポケットって何? と思われる方も多いとおもわれるが、要は「瞬冷冷却服」、つまり日本の異常高温の夏を乗り切る切り札になるはずだった冷却システムのついた服のことだ。
 五輪観戦時の熱夏を避ける救世主になる予定であり、ウオークマン以来ソニーの名声をふたたび世界中に知らしめる絶好の機会ととらえていた。

 ファンを使った空冷式の冷却装置は昨年の夏圧倒的な話題をひろったが、ソニーの仕掛けるのは、スマホで温度調節できる冷却デバイスを使った「レオンポケット」だ。
 電圧をかけると熱が移動するペルチェ素子を使い、首元を直接冷やす仕組みで、バッテリーが持つ限り冷たさがへたる心配はない。専用のインナーに装着すれば目立たずに着用できるのも魅力、五輪観客や夏のサラリーマン待望の商品だったが、武漢コロナのお蔭で商機をいっしたというところか。

 ワークマン、ミズノはファン付作業着、デサントはフロントファスナーを開けたままでも冷却効果をえられる「デサント・クールJAC」、アオキは「クーラー・ベスト」と各社夏の高温対策にのりだしているが、みな一様にオリンピックの腰折れで生産調整、宣伝調整にはいっていると聞く。
 日本の夏を変えると頑張っていたソニー、果たして来年の夏まで在庫がもつか、その辺が心配である。
 「レオンポケット」ガンバレなのだ。
posted by Kazuhiko Hoshino at 11:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月27日

夜8時の拍手

シャロンヌ通り.jpg

 パリ11区シャロンヌ通りに住む友人Tomo & Yukiからのメールである。

 夜8時になるとあちこちのアパートから拍手がきこえてくる。
 お医者さん看護師さんその他大勢の医療に従事する人々への、感謝と応援の拍手だそうだ。
 拍手はアパートの中庭のあちこちからもそれぞれの想いをこめてきこえてくる。昨日の晩にはお鍋をたたく音まで加わったと書かれていた。

 ひときわ明るい窓が開けられ、立派な髭をたくわえた紳士が現われる。堂々としたテノールで「誰もねてはならぬ」オペラの歌曲が歌われる、あちこちの窓が開いてそれぞれに聴きいる。窓辺の椅子に座って静かに聞きいる老夫婦、手を振りながら乗り出してきく子供達、新婚の若いカップルも窓をあけ小鳥とともに耳を澄ましている。
 オペラ座も閉鎖され、彼の歌うべき舞台も奪われてしまった。せめて近所の人々にでも聴いてもらえたら。外にでることは一切禁止されているので、我が家の窓から天に向かって歌う。路地をへだてた向かいの人々も彼の声にききいる。窓から窓に広がるオペラの響き、あちこちの窓からの拍手は、彼の耳にはオペラハウスのアンコールに聴こえたに違いない。

 外出をするときはいちいち許可証をもって出ねばならず、それでも初日には400人のフランス人が捕まり、三日間ですでに4000人のパリジャンが捕まったそうだ。アパートに閉じ込められた二人には静かな絶好のときと捉えて過ごしている、と結ばれていた。
  パリから届いた武漢コロナの日々と、そこにあるいかにもバリジャンならではの心温まる拍手の夜のお手紙でした。
posted by Kazuhiko Hoshino at 16:24| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月26日

嘉永2年お雛様の祝い膳

享保雛.jpg

 長野から長野電鉄に乗る。市内は地下鉄になっている。
 JKの賑やかなグループや湯田中温泉の女将さんでもあろうか、粋な小紋の女をよこめに久しぶりの地下鉄だった。昔は東京東急の路線を走っていたという昭和の香りのする電車である。

 善光寺下をぬけて地上にでると、そこは雪国だった。
 信州須坂にある田中本家美術館で今日は、嘉永2年3月の五代当主田中主水の初孫初節句の祝い膳の会だ。
 豪商の雛人形は京都で三井総本家のお雛様の色々を見たことがあった。青山の根津美術館では、虎屋さんの黒川家に伝わる人形展があった。
そのいずれもが日本を代表する旧家だったので、いわゆる享保雛から現代まで、娘を想う、孫を想う親のきもちが、人形のしつらえに現れ素晴らしい体験だった。
 須坂の田中本家も地方の豪商とはいえ、須坂藩最大の商家だけあってお料理の組み立ても素晴らしく、贅をつくしたお魚料理や懐石に沿った山海の珍味に舌ずつみをうった。

 なにより御当主田中宏和さんの説明が楽しく、一歩引きながらも品のある冗談を散発して楽しませてくれた。
 座敷のそとは音もなく降る雪で、雛のまつりのご馳走に雪のご馳走を重ねた至福のひとときであった。
posted by Kazuhiko Hoshino at 18:01| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月21日

シルク・ド・ソレイユ95%解雇

シルクドソレイユ大舞台.jpg
 ラスベガスのストリップからショウのネオンが消えた。
 ショウビジネスに関わってきた身としてこんなに寂しいことはない。
 ショウを勉強するのなら先ずパリ、そしてニューヨーク、仕上げはラスベガスというのが若いころからの不文律だった。ショウ・ビジネスはそれ以外の世界には存在しなかった。宝塚、日劇、国際とこの国にもショウはあったが、ニューヨークやヴェガスのショウには比べものにならなかった。
 宝塚はキレイだったが少女趣味にとどまっていたし、日劇には世界の民族舞踊というテーマがあったが短期公演だったために採算がとれずに幕を下ろした。国際は劇場があまりに大きく、下町風な良さはレビュウから洗練さを奪った。

 現在世界のレジェンド・ショウの95パーセントを制作しているシルク・ド・ソレイユが、武漢コロナの直撃をうけスタッフ・キャストの95パーセントに及ぶ4679人を解雇すると3月19日に発表した。
 もとはカナダの火吹き大道芸人ギー・ラリベルテによって設立されたシルク・ド・ソレイユは、余りにも規模が大きくなりすぎ、現在株の持分はTPGキャピタルというジャンク・ファンドが60パーセント、中国の復星国際が20パーセント、ケベックの預金ファンドが10パーセントという株主によって運営されている。
 日本人も60人のダンサーとサーカスマン、ヴァイオリン3名、衣裳デザイナー1名が参加しているが、恐らく皆解雇されたのだろう。

 ベガスでは MGMグランドホテル(Kaカー) ホテル・ベラージォ(Oオー) トレジャー・アイランド(Mystereミスティール) ニューヨーク・ニューヨーク(Zumanityズーマニティ) ミラージュ(Loveラブ) ルクソール(Criss Angel Mind Freak Live) マンダレイ・ベイ(Mickael Jackson One)などストリップにある大きなホテルのショウをほとんど製作しているが、彼らのショウは劇場機構からすべて作り変えるため、他のショウを入れることは不可能なのだ。

 コロナのパンデミックが収まったのち、この全員解雇に近い状況からどう立て直していくのか注目したい。その時がきたら再公募してオーディションにかければいくらでも集まると考えているのかもしれない。ショウ・ビジネスの非情な過酷さが武漢コロナを機会にあぶり出され、ノー天気な日本人には代えっていい薬かもしれない。
posted by Kazuhiko Hoshino at 15:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月19日

Twitter始めました。

コロナの暇つぶしに、いつまで続くかわからないTwitterをはじめました。
どうぞよろしく。

アカウント:Hoshino.K@karuizawa321
posted by Kazuhiko Hoshino at 15:43| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月17日

パリからカフェが消えた

ラロトンド.jpg

 武漢コロナのお蔭で、パリからカフェが消えてしまった。
 パリにとつてカフェは空気そのもので、街角からカフェが消えたらパリは生きていけない。

 サルトルは「レ・ドウ・マゴ」の5階に住んでいたし、モディリアニは「ラ・ロトンド」で、ピカソや藤田嗣治は「ル・ドーム」で若い夜を費やしていた。
 Kづくめのシックなジエンヌが働くトロカデロの「カレット」も閉めている。せめて彼女たちがコロナに感染することなく、ペントハウスで静かに過ごしていてくれたらと祈るばかりだ。
 エッフェル塔もルーヴルもみな閉められて、パリは死んでいる。

 1947年にアルベール・カミュが「ペスト」という小説を発表した。
 とある医者が一匹のねずみの死体に遭遇するところから始まる話だが、その描写が武漢ウィルスに似ているというので、いま改めて反響をよんでいる。直面する死への恐怖、愛する人との別れなど、伝染病ペストを介して予期しない戦いが描かれている。
 焼け野原と化した銀座の小さな喫茶店でページをめくったことを思い出した。

 哲学という言葉はサンジェルマンのカフェときっても切れないし、モンパルナスのカフェでは20世紀の画家たちのさんざめきを想像した。
 パリのカフェにはいっぱいの歴史や文学があふれている。パリにもしエッフェル塔がなかったら、というジェンヌたちの設問があるが、それ以上にパリからカフェが消えたら、パリの人々にとってこんなに苦しい日々はないだろう。
 パリで働く若き友人、tume & yuki お二人はコロナを蹴散らしているだろうか。ちょっぴり心配である。
posted by Kazuhiko Hoshino at 12:09| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月16日

「満島ひかり」に蹴散らされた「檀れい」

 黄昏の地上波TVのなかでビールのCMだけが元気をたもっている。

檀れい.jpg

 ビールCMの出演者のなかで、サントリーの「檀れい」ほど女性層に受けなかったタレントはいない。
 2007年以来60本以上の作品をとったが、ことごとく不評だった。彼女が考えて演じれば演じるほどユーザーを失っていった。すべてが男受けを狙った計算ずくと受け止められ、夫の及川光博までがドツボに嵌まったオバカな俳優と評判を落とす結果を招いてしまった。
 その仕草や台詞のひとつひとつが、積極的なあざとさと受け止められて、檀れいは金麦とともに沈没した。彼女はいま松竹エンターテイメントを止め、太田プロにかわったが、有吉や指原のいるお笑いプロになじめるか、どうか、はなはだ疑問だ。
 彼女の表現の誇張は宝塚という土壌に大きな責任がある。一方的な自己顕示のみで転がしていく宝塚の演技はとても一般人の鑑賞にたえられるものではない。少女歌劇という背景があってこそのものだ。天海祐希、黒木瞳、大地真央、檀れい、紫吹淳など、みんなお多分にもれずリアルな芝居はできない。

 サントリーは檀れいに懲りて、石原さとみへスイッチしたが、中年のわざとらしさから若い自然体へというコンセプトが先行し、やたら花吹雪を散らす効果さんの大変さと石原のオーバーなアドリブだけが目立っている。

ミツシマとビール.jpg

 今いちばん光っているのはキリン新一番搾りの「満島ひかり」かもしれない。
 餃子、おでん、寿司、焼き鳥と、ビールが美味しい瞬間にだけ映像をしぼっている。男たちのたまり場屋台での飲み比べや、仕事帰りのひとり焼肉と、今のはたらく女性のリアルに焦点をあわせている。スタッフが明確なコンセプトをもっているというが大きい。
 満島の演技も自然とデフォルメのギリギリの線なのだが、彼女の個性に守られてなんとかリアルさをたもっている。この先飽きられないためには、なんらかのプラス・ワンが必要だろう。

 目隠しをして飲み比べなどという馬鹿馬鹿しさではなく、コクやキレにも頼らない、未知のCMコンセプトを見付けることが、ビールCMの明日を保証する。
posted by Kazuhiko Hoshino at 13:20| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月15日

祇園さんの武漢コロナ退散

八坂神社茅の輪.jpg

 京都八坂神社が時ならぬ「コロナ退散」のために、臨時「茅の輪くぐり」をしている。
 寺社は本来氏子の苦難のときにこそ祈るべきにも関わらず、おおかたの神社仏閣はそれを忘れ、予め決められている例祭のときだけ形通りの祈りを捧げている例が多い。
 八坂神社は全国祇園信仰の総本社ではあるが、同時に京都東山区、右京区、中京区に氏子を抱える氏神様でもある。氏子の通う学校は休みとなり、南座も閉鎖、都をどり、も中止となり、いつもならインバウンドの外人さんがあふれている祇園町にも、コロナの静けさが訪れている。

 例年なら七月一か月に及ぶ祇園祭では、山鉾巡行も終わった最後の夏越しの祭りに、末社の疫神社に大きな茅の輪が造られ、疫病退散を祈る。
 武漢コロナの緊急事態に急遽、大きな茅の輪が二つも造られ、拝殿前と疫神社の鳥居に取り付けられた。コロナ除けにはもっとも伝統的な祈りのかたちである。
 芸妓も舞妓も館のおかあさんも町衆もみな祇園さんの茅の輪をくぐって、コロナ退散を願う。
 氏神様は氏子のために、時の氏神になってこその祇園社なのだ。観光客のことばかりに気をとられカラフルなお札づくりに精出すひまがあったら、目の前の氏子の苦しみに眼をむけてこその氏神様である。

 あたりまえの祇園さんの時ならぬ「茅の輪くぐり」に日頃の喜捨はむだではなかったと心ひかれた出来事だった。
posted by Kazuhiko Hoshino at 12:53| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月14日

香水の街・グラースの思い出

グラース香水.jpg

 カンヌの駅前からバスに乗ってグラースに向かった。 グラースは香水の都だ。
 香水と言えば、マリリン・モンローがまとって寝たという「シャネルの5番」の時代だった。どういう弾みか「夜間飛行」等という香水に出会うとむせて気分がわるくなり、子供ね、と馬鹿にされたこともあった。
 ニューヨークのブルーミング・デール正面には資生堂の「禅」が、巨大なポスターで客を迎えていた。カネボウでも世界に通用する香水を開発するといっていたので、グラース必見とばかりにバスに乗った。

 グラースの街は古い坂ばかりのまちだった。18世紀の貴族の館が残り、昔ながらの香水ブティックがそこここにあった。
 人があまり来ないようにわざわざ道を狭く作ったときいて妙に納得した。香水博物館でマリーアントワネットの為につくつた香水瓶や化粧箱を見、ジャスミンやミモザの花がいっぱいのディオールの花畑をみて、香りに包まれた一日を過ごした。

 グラースでは自分だけの香水を調香してもらってくるのよ、というお薦めに従って、とある香水屋に飛び込んだ。目鼻立ちの整った美しい調香師が、幾百とある精油の瓶からあなたは東洋人だから絶対にこれと薦めてくれた香水はやたらインド臭く、もっと柑橘系の爽やかな香りが好きだと逆らって、ようやくマイ香水にたどり着くまで、一時間ほどのときを費やしてしまった。

 グラースの帰り道はお伽の世界から戻ってきたような不思議な幸福感でいっぱいだった。
 今では巨大な外資が入り込んで、食品香料が中心になり、かっての手づくりの香水の街はすっかり表情が変わってしまったと言われているが、それでも観光客目当ての香水の調香店には、世界中からお上りさんが跡をたたないそうだ。


 
posted by Kazuhiko Hoshino at 16:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月12日

十三代團十郎襲名の軽さと非礼・歌舞伎がイベントになった

 団十郎襲名.jpg

 十三代目市川團十郎襲名披露のチラシが送られてきた。
 A4判四枚がつながった細長いポスター状のちらしを開いてみた。片面には海老蔵と息子の写真4カットである。
 期待してもう反面をひらいてみた。襲名披露の文字が75パーセント、残り25パーセントのスペースに外題がのっている。5月6月7月の3ヶ月に及ぶ興行には團十郎と新之助の配役しかかいてない。演目も勧進帳、助六、外郎売、暫、あとは7月の三部制のだけ、襲名披露を祝って共に舞台を盛り上げてくれる役者は一切のっていない。
 團十郎、新之助だけで舞台が出来るわけではない。多くの名代、名人、上手が團十郎の大見得を引き立ててくれるからこそ、成田屋の華やかな舞台が成立する。

 3ヶ月前になって、相手役も他の出し物も決まっていない筈がない。五月公演の昼の部が勧進帳だけの筈はないが、なにをやるか判らない海老蔵ゆえ、ひょつとすると自分の出し物だけで他は上演しないというとんでもない振舞いにおよぶかもしれない。
 通常なら團菊祭なので、菊五郎さんも菊之助さんも出演する筈だし、夜の部の助六には仁左衛門さんも、玉三郎も出演するだろうしと、勝手な想像をめぐらすが、この派手なチラシのどこにもそんなことは書かれていない。
 興行主の松竹の責任か、海老蔵の責任か、マネージメントの不遜かはわからないが、いずれにしても無責任なチラシにはちがいない。

 さらに驚いたことに、その内容不明なチラシで予約をしてくれという態度である。担当者は親切に早くお日にちを下さいというが、海老蔵のことしか眼に入っていないのだろう。共に舞台をつとめる優れた役者の面子によって、劇場に足を向ける日もかわってくるという芝居好きの心情を忘れている。
 松竹から海老蔵、マネージメントのすべてが、ツイッターのイイネの世界になっている。他の演目も明らかにせず、共演者も発表せずに予約をとる。これではアイドルの公演とまったく同じことだ。歌舞伎がイベントになってしまった。
 競演してくれる先輩俳優にたいしてもこの上ない失礼なことだし、芝居好きの贔屓にたいしても非礼極まりない。

 先代団十郎襲名の折は、一年も前から狂言、共演者もきまって挨拶まわりをしていた。
 名跡襲名というものについて、こんなに軽くなったということをしみじみと感じさせる 十三代團十郎襲名のリアルである。
posted by Kazuhiko Hoshino at 13:42| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする