2017年09月20日

京友禅はインクジェットで

京友禅はインクジェットで

 オリンピックを睨んで、日本の仕事や民族遺産を強調する番組がやたら制作されている。
海外の仕事師を呼んできて、現場に連れていき、びっくりしたニッポン素晴らしい、という型通りの作り方だが、その裏にある問題点には全く迫らない。表面だけの観光チラシのような薄っぺらな作り方である。

 さて伝統衣装のなかでも、京友禅といえば最高の位置にあるが、その友禅が滅亡の危機にあるという。
 現実のライフスタイルのなかでキモノが廃れていくのは仕方ないにしても、この国の歴史に生きてきた服飾の文化そのものが忘れられ退化していくのは見逃せない。
 結婚式を始め人生の通過儀礼のなかで、式服としての友禅は貴重な文化であることは議論の余地がない。

 京友禅は加賀友禅や江戸友禅にたいして、圧倒的な華やかさと格調をもっている。京都という千年の歴史のなかで育ってきた美意識が、宮崎友禅斎の手をかりて華開いたとも言えよう。
 「ゆのし」から始まって、露草の花粉から抽出した「青花」での下絵かき、糊置き、地染め、蒸し、水洗いなどの仕事をえてやうやく「挿し友禅」となり、金銀箔、刺繍をへて仕立てにいたるのに26工程を要する。
 エルメスのスカーフはプリントだけで20工程と言われているが、型染めの機械が20回働いたというに過ぎない。
 京友禅は絵師である芸術家と、きもの職人が入り乱れて仕事を手渡しながらの26工程を必要としている大変な衣裳なのだ。

 近頃の若者はそんな面倒なことはいらない。「インクジェットでやればいい」10工程は節約できる。なによりもそのほうがコスパがいいと、簡単に利益のあがるほうになびいていく。
 いまや京都の友禅の80パーセントはインクジェットになっている、という現実をきいてガックリした。成人式の下品なキモノはほとんどインクジェットの見せかけの振袖なのだ。
 インクジェットと手描き友禅の差がわかる母親もどんどん減っている。日本文化をしらない日本人だらけになってアメリカンな日本になっていくのだ。
 経済第一主義は世界一の服飾文化を滅ぼしていく。
posted by Kazuhiko Hoshino at 11:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする