2017年10月09日

絢爛・マハーバーラタ戦記を観た

絢爛・マハーバーラタ戦記を観た

 マハーバーラタと言われても身近に感じる人はすくないだろう。もう一つのヒンドゥー教の聖典、ラーマーヤナのほうが多くの日本人には馴染みがある。
 がこの聖典はイーリアス、オデッセイとともに世界三大聖典とよばれ、古代インドに於ける宗教的、哲学的、神話的叙事記として人々に伝えられてきた。長さは聖書の約四倍、18編、10万詩節に上る長編なのだ。バラタ族の内紛、大戦争を通じて、自由に時間をとび、空間をとんで、ダイナミックに展開する思想と事象のせめぎ会い、それ故に賢者は呪い、神の子が戦うという、壮大な史記が出来上がったのだろう。

 そのマハーバーラタの歌舞伎化について、3年前から努力してきたのが、音羽屋の若獅子尾上菊之助、彼の生真面目さと努力が実って、この芸術祭10月大歌舞伎に上演された。
 間口の広い原作からどの部分をとりだすか、戯作者は悩んだに違いないが、第一作としては大成功というべきだろう。菊之助扮する迦楼奈と松也扮する阿龍樹雷王子の話により絞ったほうが、芝居の密度は上がったにちがいないが、作品の背景にあるスケール感をかんがえると、そうもいかなかったのだろう。

 音楽では歌舞伎の下座と併用したガムラン風の打物、打楽器が絶妙な効果をもたらしていた。振付についてはもう少し時代を遡るか、民族舞踊にある手法のほうがより作品に密着したように感じる。照明はいつもの歌舞伎照明よりはるかにエッジの効いた空間をつくりだしていた。衣装は神々のきらびやかな工夫とにほんの着物が意外に違和感なく見られたのが不思議な体験だった。日本のきものと北インドにある呉服の共通点を考えたとき、当然のことだったのだろう。

 最大の見せ場は戦争のスペクタクルだった。菊五郎劇団の国立劇場に於ける見事な殺陣をみているせいか、よりダイナミックな殺陣を期待したが、京劇風な旗を取り入れたり、馬や象の演出に気をとられて、殺陣の爽快感を表現するところまではいかなかった。
 さらに練り直してより良い作品に昇華されることを願っている。芸術祭大賞は決まり、の歌舞伎座だった。
posted by Kazuhiko Hoshino at 16:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする