2019年07月21日

藤舎名生 ようやく人間国宝に

hqdefault.jpg

 その笛の一瞬によってボストン美術館劇場の空気が裂けた。
 フェスティバル・ホール2000人の観客が凍りついた。ローマ法王も、天の音を聞いたと賛美した。 それほど藤舎名生の笛は凄い。静寂から天地鳴動のふり幅が、西洋楽器の表現を軽く蹴散らす。フルートもオーボエもかなわない。

 その笛に出会ったのは、初めて日本の空にジャンボジェットが飛んだ時だった。その飛行機に乗り込み、香港で日中合作のショウをやりたいので、演出をして欲しいというプロポーズだった。香港では、中国の伝統楽器オーケストラが待ち構えているので、という要請だった。
 当時海外で演奏されるにほんの音と言えば、お琴に三味線と決まっていたが、その趣味にはとても付いていけないので、打ち物の堅田喜佐久さんに相談した。その時堅田さんが、京都に凄い笛の若手が現われ話題になっている、一度会ってみたらということだった。
 香港では、30人ちかい中国合奏団にたいし、笛と鼓のわずかフタツの日本伝統楽器で舞台づくりをし、見事に中国を圧倒した。

 その後、多くのファッション・ショウや、東大寺の昭和大納経、あるいは軽井沢朗読座の舞台など、数えきれないほどの演奏協力をいただいた。人柄と心を蕩けさせる笛の力で女性にはメッポウもてた。そのため楽屋では、名生さんに近寄るとニンシンするよ、と嫉妬まじりの噂が乱れ飛んでいた。
 都をどりの楽屋でも、笛のおしょさんは藤舎名生、普段見ることのない真面目顔で、芸妓さんと向き合う名生さんがいる。

 堅田喜佐久さんは10年も前に人間国宝となったが、藤舎名生さんはようやく二日前に人間国宝になった。その演奏を知っている人間は、30年遅いよ、と叫んでいる。
     ……おめでとうございます。いつまでも元気で奇跡の笛を聞かせてください。
posted by Kazuhiko Hoshino at 11:14| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする