2019年11月05日

祇園切通しの進々堂さん

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 祇園町北側切通しの進々堂さん……といえば祇園のお女将さんから芸妓、舞妓さんにいたるまで足を向けて寝られない。進々堂さんが無かったら、祇園町は機能麻痺におちいるかもしれない。

 朝食はティファニーならぬ、進々堂さんというのが祇園町の当然である。朝起きたらまず進々堂さんに電話をかける。「コーヒーにトースト」あるいは「コーヒーにサラダにサンドウィッチ」トーストはバターなのか、ジャムなのか、サンドウィッチは玉子なのかハムなのか、サラダはコロッケサラダか、ハムサラダか、それぞれの好みを全部のみこんで、洗顔が終わった頃には「おはようさん」とポットに入ったコーヒーと暖かいサンドウィッチが届けられる。
 祇園町では朝食は電話でというやかたが多い。筆者も祇園に泊まった朝はたいてい進々堂さんの世話になっている。

 一年の締めくくりと歳のはじめの「まり」と呼ばれる舞妓さんへの配りものも、この進々堂さんでつくられている。ご主人の藤谷攻さんによって祇園町で配られるすべての「まり」がつくられている。
 ご挨拶まわりを済ました舞妓さんがいくつもの「まり」を下げておこぼの音とともにやかたに帰ってくる風情はなんとも可愛らしい。「まり」のなかには紅、簪、アクセサリーから干支人形、あるいは茶道具、貯金箱までいろいろと入っているが、若い舞妓さんにとってお茶屋のおかあさんからいただく、この贈り物は楽しみいっぱいの幸せなのだ。

 作家の先生方の新作展覧、舞のおさらい会の楽屋見舞い、あるいは南座の歌舞伎公演など、楽屋見舞いのアイス・コーヒー100人前とか、裏方衆へのサンドイッチ150人前、即座に対応してくれる祇園ならではのカフェである。今日の観世さんの演能にサンドイッチと飲み物とどけて、といえばなにもきかずに能楽堂の楽屋にとどいている、という「おもてなしの匠」ともいうべきカフェなのだ。

 筆者もパリ展の折、いち早くパリのフジネットワークのボスに連絡をとってくださり、大変世話になった。切り通しの小さな喫茶店とおもったらとんでもない間違い、祇園町の裏のネットワークを司る進々堂さんなのだ。
posted by Kazuhiko Hoshino at 17:38| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする