2020年01月07日

初春の「菊一座令和仇討」

菊之助正月国立.jpg

 劇場に入るとそこここに繭玉が飾られ、大凧が上がっている。
 ロビーの中央では江戸太神楽の獅子舞が正月を寿いでいる。
 一角には吉徳による祝いの羽子板が飾られ初春狂言と役者衆の首絵がたのしい。
 芝居好きの奥様方やお嬢さん方はここ一番の着物姿で清々しいほどに美しい。菊五郎劇団の初芝居はここ平河町の国立劇場、もう何十回通ったことか、三島由紀夫が大好きだった鶴屋南北の通し狂言はいまだにその伝統を保ち、菊五郎さんのこだわりと国立文芸部の努力によって続けられている。

 菊一座令和仇討…金沢瀬戸明神の華やかな揃い踏みに始まり、古寺の化け物騒動、懐かしい團蔵、秀調に始まる六浦堤の場、江戸銭湯福寿湯の板の間かせぎ、小存知鈴ヶ森のだんまり、そして大詰めのつらねから大殺陣、立回りから大団円の富士の山と桜尽くし、初春狂言の要所をおさえた楽しい構成であったが、敵討ちの不条理を正当化するエネルギーにすこし欠けていたきらいはあった。
 初春芝居につきものの曽我の十郎五郎のおはなしが少し遠くへ行ってしまったことが、白井権八、鑓の権三への感情移入の浅さにつながり、幡随院長兵衛の大物ぶりも、観客にはあまりピンとこない世の中になってしまったのではないか。落語に言う客が悪いといったことなのかもしれない。
 が菊五郎劇団の初春狂言には、そうした情報化社会の欠点を蹴散らしていくエネルギーがまたれる。三幕目に一段の工夫、スペクタクルな演出がひとつはいったらよりよくなった令和仇討だったことだろう。

 ひさしぶりの富司純子さんに馳走にあずかり、菊之助夫人も元気だった。ナウシカで怪我をした菊之助さんも活躍し、客席では横溝幸子さんにあった。暗い客席でメモをとりながらの評論活動もさぞご苦労なことだ。たまたま記者総見の日にぶつかったが、浮世絵につぐ民俗遺産として歌舞伎を守ってほしい、と念じながら平河町を後にした。
posted by Kazuhiko Hoshino at 13:01| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする