2020年05月20日

スペイン風邪による遠山郷の悲劇

第5展示室 図面034.jpg

 インカ帝国が滅びたのは、スペイン風邪のせいだったと、テレビで池上なにがしが得意気に話していた。
 手元に「スペイン風邪などの疫病と民俗」について桜井弘人さんの論文がある。長野県の秘境と言われている遠山郷を舞台にこつこつと足で集めた論文である。
 20世紀初頭に世界的に大流行したスペイン風邪の爪痕と民俗に残された文化的影響についてのべられている。信州の奥にある小さな村が悪疫と戦った伝承には、慄然としてコロナ以上の恐怖を覚える。

 スペイン風邪では、日本人の死者は関東大震災の五倍にものぼる45万人だったと伝えられている。コロナを抑え込んだのは、日本人の意識が高いと自画自賛している場合ではない。ついこの間のスペイン風邪で、ニューヨーク、イタリア以上の被害をだしていたのだ。

 遠山郷にある下栗の伝承に記されている。大正7年生まれの胡桃沢ちさ子さんは、満2歳の時、一時間のうちに両親を相次いで失った。
 最初に母が亡くなり、埋める穴を村の衆が掘っている最中に父も亡くなったので、「おとうも死んだで長く掘れよ」長い穴に二人を埋葬した。育ててくれたおばあちゃんから後に聴いた話だという。薬も注射もなく、ひとつの集落は全部死んで創健者はひとりもいなかったという記事が上の記事である。

 インカ帝国の話も結構だが、足元の日本の出来事を伝えることも大切ではなかろうか。

 こうした疫病の結果、村の入り口に大きな草鞋を作ってつるしたり、集落に憑りついた疫病神を外に出して、無病息災を願う「事の神送り」という信仰行事が始まったという時宜をえた論文が伊那民俗研究からだされている。
 民俗を知ることは世界を知ることだ。
posted by Kazuhiko Hoshino at 12:16| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする