2020年06月13日

犬たちの伊勢参宮

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 江戸時代、60年に一度、突如として起こった伊勢神宮をめざした「おかげ参り」についてあれこれ資料を整理していたら、人間のことよりも「犬たちの冒険旅行」に眼を奪われた。
 飼い犬をひとりぼっちで伊勢参宮に向かわせるというのだ。
 飼い主の主人公が病をえてその年の伊勢参りが出来なくなった時、犬の首に注連縄を巻き、そこに伊勢参宮をこの犬に託する旨の手紙を付ける。 勿論餌代に相当するお金もつけて、お伊勢参りの人達に紛れて、参宮代参を犬に託したという。

 広重の「伊勢参宮宮川の渡し」や「東海道五十三次四日市」にもこの「おかげ犬」といわれた犬たちが描かれている。
 道中この犬に出会った人々はエサを与え、寝床も用意して面倒をみたのだろう。けっして贅沢旅行ではなかった「おかげ参り」の人々にとって迷惑ともいえるこの犬の面倒をみるのは楽なことではなかった筈、それでも伊勢参宮の人々にあった優しさがこの犬の代参を助けた。
 何日間も見知らぬ旅をしてようやく着いた伊勢神宮では、神官が竹筒にはいったお札を犬の注連縄につけて返したという。

 福島須賀川の十念寺には伊勢参りを代参した「シロ」の犬塚がある。須賀川の旧家市原家に飼われていたシロは兼ねがね利口な犬だという評判だったが、ある年主人が病に倒れ、恒例の伊勢参りにいけなくなったとき、シロの代参があった。
 シロは2か月後に伊勢内宮のお札を首の竹筒に入れ、ふらつきながら福島まで返ってきたという。アッパレなシロのお伊勢参りが今日に伝えられている。

 明治以来政府の方針で洋犬ばかりとなつてしまったが、日本には昔から住み着いていた村落犬や地域犬がいた。秋田犬、川上犬、紀州犬、甲斐犬、柴犬などみな優れた里犬だった。
  カタカナ文字の犬種に憧れるのも結構だが、もう少し日本の犬の優れたところにも眼を向けるべきだろう。

posted by Kazuhiko Hoshino at 13:18| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする