2020年09月03日

ルーブルにある名画「摘ままれた乳首」

ガブリエル・デストレ.jpg

 ルーブル美術館の収蔵作品の中で画学生たちにもっとも人気のある作品といえば、通称「摘ままれた乳首」である。
 正しくは「ガブリエル・デストレとその姉妹ビヤール公爵夫人とみられる肖像」。この作品は作者不詳ながら、テムペラから油彩に発展した時代のさきがけの作品で、画学生の模写にとって最適の絵画とされている。

 エロティックでありながら、第二次フォンテーヌブロー派の完成度の高さを見せている奇妙な作品とも言われている。
 アルス・ノーヴァ新しい芸術と呼ばれた分類に入るものの、タブロオの構成には時代背景というより、時代のリアルがきっちりと書き込まれ、この絵を依頼した貴族について様々の探索がなされているが、いまだ定説はない不思議な絵画なのだ。

 乳首を摘ままれているのは、アンリ四世の数ある愛人のなかでもっとも勇敢で知的と言われているガブリエル・デストレなのだが、乳首を摘まんでいるのは妹のビヤール公爵夫人で、姉の三回目の妊娠を示唆しているといわれている。国王は彼女のことをこよなく愛し、正妃と別れ彼女と結婚することを望んだが、彼女は挙式3日前に何者かによって毒殺されるという数奇な運命に翻弄された。
 この一枚の絵のなかには当時の宮廷の愛の暗黒が描きこまれている。 遠くの下女はやがて生まれてくる嬰児の服を縫い、小さな額縁のなかにはアンリ四世の下半身が描かれているという、実にリアルな状況が具象化されていて、時代の背景を描き込むという当時のフランドル絵画の基本がきっちりと守られている。

 座の会でままお目にかかるテレビ信州の元専務笠井重光さんが、若き日この「摘ままれた乳首」の模写にパリまで出掛けられていたときき、その情熱に敬意を表してブログを走らせた次第。
posted by Kazuhiko Hoshino at 17:52| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする