
「時代錯誤」という言葉がこれほど似合うTV-CMはほかに見当たらない。
木村拓哉を起用したニッサンの車のコマーシャルである。コマーシャルであるから、車のイメージをアップするために、莫大な金を使って製作する筈だが、このコマーシャルはどうみても販売促進のプラスにはならない。ニッサンの足をひっぱるために制作されたのではないか、とさえ思える。
大手の代理店がついて、広告ディレクターやらデザイナー、カメラマン、さらにコピーライターまでついて作られたにちがいないが、今時のスタッフがこの設定に満足して制作したコマーシャルとは到底信じられない。時代を知らないスポンサーのお偉さんのゴリ押しで作ったとしか思えない。
そもそもキムタクという選択が不思議だ。いまのキムタクに新車をイメージさせるのは、まつたく不可能である。われわれ世代ですらそう思うのだから、若い電気自動車世代には違和感しか残らないだろう。短い脚でのムーン・ウォークは30年前に引き戻される。指パッチンでハンドルを握るなど半世紀まえの湘南族でも恥ずかしかった。キムタクの演技ひとつひとつが、こんなクルマは買いたくないし、乗りたくないと思わせるに充分なのだ。
ニッサンの広報はヤキがまわってしまったのか。
最後の仕上げが「やっちゃえ、ニッサン」一人称なのか三人称なのか意味不明。キムタクの自己満足とニッサンの時代錯誤が入り乱れたカオスのTVコマーシャルである。
こんなコマーシャルをつくっていては、日産の再建は絶望的ではないか、とさえ思われる。