
コロナ・パンデミックのなか、世界中の美術館やギャラリーが困難に直面している。
オンラインで工夫してやっているところもあるが、個人とアートとの直接対話を主題として成立している美術館ビジネスでは、自己否定いがいのなにものでもない。
人的資源の確保のため、肝心の芸術資源を犠牲にしてヤリクリを続けているギャラリーも多いと聞く。
そんな中で、いま着々と進行しているのが、美術の世界のジェンダー・バランスである。
既に国立新美術館館長には逢坂恵理子が就任、公立の横浜美術館館長には藏屋美香、私立の森美術館には片岡真美、この4月1日から金沢公立の21世紀美術館館長としてキュレーターの長谷川裕子が就任することになった。
開館当時、予告パーティをヴェネチア・ピエンナーレで開催するなど、話題をよんだ21世紀美術館だったが、三代つづいた男性館長では明日への展望がもてなかったのかもしれない。当初比較的安価に購入できる現代美術作家に焦点を当てたためそのごのコレクションに齟齬をきたしたのかもしれない。
その点、始まりのコレクションにたずさわった長谷川裕子を呼び戻したことが、凶とでるか、吉とでるか。美術館にある三つの課題、美術と経営と労務管理をうまくこなすことができるか。
コロナ下では、海外作品の出入りは不可能、ブロックバスターと言われる何十万人も動員するスポンサード展もひらけず、コレクションの再発見にたよるしか残された道はなく、女性館長による繊細なコレクション再発見こそが、勝負のしどころかもしれない。ままありがちの「母と子の……○○展」とか「……教室」的な企画にならぬよう祈るばかりだ。