2019年01月07日

初芝居、初とんかつ

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 「正月に櫓をくぐる」というのは、今では花街にしか残っていない習俗だ。櫓というのは、芝居小屋の木戸のうえに丸太で組み上げたもので、二本の梵天と五本の槍で飾られ、芝居小屋の定紋を染め抜いた幕で囲まれた人一人がのれるほどの木組である。
 自由に芝居が出来なかったあの頃、幕府の許しをえて芝居をやっていた小屋が目印として揚げたのが、芝居櫓だった。
 正月の櫓くぐりは、芸道精進の願いであるとともに正月神への奉納芸の意味ももっていた。今櫓がきちんと揚げられている小屋は東京では歌舞伎座、京都の南座、四国金丸座ぐらいか。いずれにしても松の内に芝居をみるというのは、江戸っ子にとっても大事な習俗だつた。

 江戸っ子の筆者も子供のころから正月は初詣と芝居見物と決まっていた。
ここ数年の初芝居は半蔵門の国立劇場へいく。ロビーでは太神楽一行の獅子舞が舞われ、振袖姿が獅子に噛まれて嬌声をあげている。天井には大凧が上がって華やいだ風にみたされている。ずらり並んだ羽子板におもわず羽根つきがしたくなるような初春の芝居小屋、役者衆の奥様方の気働きが映る。

 狂言は菊五郎劇団総出演の「姫路城音菊礎石」(ヒメジジョウオトニキクソノイシズエ) 国宝姫路城を舞台にした並木五瓶の昔語りを下敷きに、菊五郎丈と国立の得意とする復活通し狂言の芝居だ。
 序幕曽根天満宮境内の場勢ぞろいで、いきなり流行のUSAを踊りだしたのにはびっくり、歌舞伎役者のリズム感のよくなったのに感心、おもわず客席の手拍子にまきこまれる。
 姫路城天守の場では、妖怪の正体を見届けんと菊之助客席を走り回るに、いかなる妖怪が登場するやと胸ときめいて期待したが、肩透かしにあい、いつもの菊五郎劇団ならここで痛快なスペクタクルとなる筈が、大妖怪の休演とは少し悲しかった。並木五瓶の世話物風に引っ張られたか、そこは鶴屋南北の見世物風にいってほしかった。ダイナミックな荒踏無稽を見せきれる芝居は菊五郎劇団しかない。オサカベ物の最後は泉鏡花も腰を抜かした辺りがターミナルではないか。

 年頭の江戸参りなので、帰途御徒町に車を走らせた。とんかつぽんた本家である。4時から開店に4時15分にはもはや満員とはおどろいた。上ロースもなければ、ヒレもなく、うちは「かつれつ」だけというのに江戸っ子の意地を見た。キャベツのやたら細いのに感心、これはシャープか、パナソニックかとくだらない詮索、包丁仕事の凄さに感動して江戸をあとにした。
posted by Kazuhiko Hoshino at 12:45| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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