2019年05月15日

江戸前天ぷらの「天亭」

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 銀座八丁目の角に不思議なビルがある。
 銀座なのに新橋会館とある。昔は新橋だった。それ故に新橋組合の検番と稽古場が6,7,8、階にある。
 近頃の人は銀座は1丁目から8丁目までとおもっているが、銀ブラを愛した世代には7丁目から先は新橋だった。
 新橋の花街が演舞場のまわりだけになったのはごく最近のことだ。したがって7丁目、8丁目には洒落た着物やさん、地味な和装小物や、ポチ袋、能楽堂や銭湯がひっそりとある。 思わぬところに「東おどり」のポスターがはってあり、足をとめて店をみると三味線が置いてあったりする。お菓子屋でも芸妓衆の手土産にふさわしい小さく細いかりんとう、薄ずくりの煎餅などを並べて商う店がある。

 新橋芸者の通う稽古場の地下二階に、てんぷら「天亭」がある。
「近藤」の天ぷらが食べたければ、一週間前には覚悟しなければ予約がとれない。銀座シックスの「山の上」にしても3日前の覚悟がいる。
「天亭」は、ついでに立ち寄っても白い眼でみられることはない。江戸っ子が新橋で遊んで帰りによつても、粋な天ぷらに出会える。寿司の久兵衛も近くにある。立派なカウンターはチョコレート色で、着物姿の移りがいい。シンプルなインテリアも絵が一枚だけ、これみよがしのメニューのないのがいい。

 小ぶりの海老に始まり、白魚、野菜、椎茸、青豆とすすむが、太香極淡胡麻油の軽さから店の空気にべたつきがない。かき揚げに達するころには粋な江戸前てんぷらとはこういうものかと得心する。すべての種の選択が粋でこれ見よがしのない江戸っ子風で気持ちいい。

 レジの横にさりげなく「きみ勇」「喜美香」など、花名刺が張られていて新橋花街なのだと気ずかせてくれる。 
posted by Kazuhiko Hoshino at 15:18| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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