2019年09月06日

オルフに負けた熊川哲也

カルミナブラーナ.jpg

 Kバレエによるカルミナ・ブラーナを観た。
 カール・オルフによる世俗的カンタータが異常に好きだ、という理由からでもある。バッハの昔からあるカンタータに対して、もっとも新しいこのオルフの作品は、怒涛の合唱と独唱と打楽器群を中心にしたオケの表現が、極端にダイナミックで魂を揺さぶられるからだ。、
 オルフのこの曲には、威狂った大自然やコンクリートに固められた都市文明を吹き飛ばす、哲学にみちた音の世界がある。
 心配した東フィルも、新国立劇場合唱団も見事な演奏で答えてくれた。称賛すべきは指揮のバッティストーニ、明確な棒で、この世俗カンタータの輪郭をえがいた。

 さて真ん中にきた熊川哲也の振付・演出だが、音楽に負けたというのが正直な感想である。
 始まりの女神と悪魔の交歓が、千手観音のごときモチーフに始まったが、形にとらわれたダンサーが、存在よりテクニックに左右されたとこからモダン・バレエのマテリアルを失い、ストーリー・バレエのクラシックを想起させた。
 群衆も貧弱な存在で悪魔に立ち向かう迫力もなく、着衣でも裸体にかわってもなんの変化もない存在だった。上半身むきだしになっても人間が剥き出しにならない不思議な群れのコールドでは、オルフに勝てない。
 ベジャール以来、多くの群舞表現に恵まれたバレエ界だが、振付師の不勉強なのかもしれない。ここ数年折に触れて観ているパリオペラ座バレエ団の人間表現には遠く及ばない現実をみせつけられた。
 たくましい肉体は勿論のこと、より世界観をもち、人生観をもったバレエ・ダンサーがでてこないとこうした作品は完成しない。Kバレエには、ないものねだりなのかもしれない。
 カルミナ・ブラーナはパリ・ガルニエ宮でこそのレパートリーと認識した。
posted by Kazuhiko Hoshino at 15:39| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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